2050年のカーボンニュートラルおよび循環型社会の構築に向けて、バイオ素材の高度な利用が望まれている。これまで、有機素材は主に化石資源から生産されてきたため、燃焼時に生じる二酸化炭素や有毒ガス、廃棄時に生じるマイクロ/ナノプラスチック等環境汚染の原因となってきたが、その一方で軽くて丈夫な有機素材は19世紀以降現代文明を支えてきたと言っても過言ではない。すなわち21世紀型の材料開発は、いかに有機素材の素材としての利点を活かしながら、環境性能を上げていくことができるかに焦点が当てられていくこととなる。
本提案では、限られた資源でどのように有機素材を作り、利用し、リサイクルをするかという観点で、生物による有機素材作りを行う。環境性能に優れたバイオ素材の酵素合成および微生物合成を微小重力下で行い、得られた素材の性質を詳細に調べることで、全く新しい水系反応場におけるバイオ素材生産の可能性を試すことを目的とする。現状、多くのバイオ素材は水に対する比重の大きさから、水系では沈澱を作りながら不均一な反応が起こるのに対して、微小重力下では均一で力学的強度が優れた素材生産が可能となる。そのようにして得られる新規素材は、宇宙船内で循環型素材として用いられるだけでなく、それらの性質に関する情報は新しい素材産業への応用が期待される。
拠点形成活動としては、One Earth Guardians育成プログラム(東京大学)や北海道大学、京都大学で、トピックスとして「宇宙船地球号におけるもの作り」と題したセミナーなどを企画し、宇宙で素材を作ることと地球における素材の循環に関して、学生などと議論をする場を設ける予定である。また、企業向けには国内外の展示会などで活動報告をするとともに、セミナーなどで異業種の交流の場を作る予定である。